かも

かも
I
かも
(終助)
〔係助詞「か」に係助詞「も」の付いたものの文末用法から, 一語の助詞となったもの。 主として上代に用いられ, 中古以降はおおむね「かな」となる〕
(1)体言, 用言の連体形または已然形, シク活用形容詞の終止形などに接続する。 (ア)詠嘆の気持ちを込めて, 疑問の意を表す。

「暁(アカトキ)の家恋しきに浦廻(ウラミ)より楫の音するは海人をとめ~/万葉 3641」「今さらに妹に逢はめやと思へ~ここだく吾が胸いぶせくあるらむ/万葉 611」「玉匣(タマクシゲ)あけば君が名立ちぬべみ夜深く来しを人見けむ~/古今(恋三)」(イ)詠嘆の気持ちを強く表す。 「人ごとに折りかざしつつ遊べどもいやめづらしき梅の花~/万葉 828」「うつせみの世は常なしと知るものを秋風寒み偲(シノ)びつる~/万葉 465」「悔(クヤ)し~かく知らませばあをによし国内(クヌチ)ことごと見せましものを/万葉 797」

(2)助動詞「む」「けむ」などの已然形に接続して, 反語の意を表す。

「大船を舳(ヘ)ゆも艫(トモ)ゆも堅めてし許曾(コソ)の里人顕(アラワ)さめ~/万葉 3559」「歌のさまを知り, ことの心を得たらむ人は, …古(イニシエ)を仰ぎて今を恋ひざらめ~/古今(仮名序)」

(3)打ち消しの助動詞「ず」の連体形「ぬ」に付いて, 願望の意を表す。

「吉野川行く瀬の早みしましくも淀むことなくありこせぬ~/万葉 119」

かも(連語)
II
かも
(連語)
※一※〔係助詞「か」に係助詞「も」が付いたもの。 上代語〕
種々の語に付き, 係助詞的にはたらく。 係り結びを起こし, 結びを連体形で止める。 詠嘆の気持ちを込めた疑問の意を表す。 …かなあ。

「置目もや淡海の置目明日よりはみ山隠りて見えず~あらむ/古事記(下)」「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとり~寝む/万葉2802」

※二※〔副助詞「か」に係助詞「も」の付いたもの。 近世以降の語〕
種々の語に付き, 副助詞的にはたらく。
(1)「かも知れない」「かも知れ=ぬ(=ん)」「かも知れません」などの形で用いられる。
かもしれない(連語)
(2)(「かも知れない」などの言い方の「知れない」などを略した形として)不確かな断定を表す。 話し言葉でのくだけた言い方で, 「かもね」「かもよ」などの形をとることが多い。

「もう学校へ行った~ね」「もしかして, お土産がある~よ」

III
かも【加茂】
(1)新潟県中部の市。 近世からの名産桐だんすのほか, 木工・金属加工が盛ん。 延喜式内社青海(オウミ)神社のある加茂山公園は県木ユキツバキが群落する。
(2)京都府南部, 相楽(ソウラク)郡の町。 聖武天皇の恭仁(クニ)京が置かれた。
(3)岡山県北部, 苫田(トマタ)郡の町。 中国山地, 吉井川支流の加茂川流域にある。 林業が中心。 黒木ダムがある。
(4)島根県東部, 大原郡の町。 斐伊(ヒイ)川支流の赤川の盆地にあり, しばしば水害を受けた。
IV
かも【加茂】
姓氏の一。
V
かも【氈】
獣毛で織った敷物。 せん。 [新撰字鏡]
VI
かも【賀茂】
姓氏の一。
VII
かも【賀茂・加茂】
能の一。 脇能(ワキノウ)物。 賀茂明神に参詣(サンケイ)した神職の前に神の化身である女が現れ, 神体の白羽の矢のいわれを語る。
VIII
かも【賀茂・鴨】
京都市鴨川流域の上賀茂・下鴨の総称。 ((歌枕))「かれにける葵のみこそ悲しけれあはれとみずや~の瑞垣(ミズガキ)/新古今(恋四)」
〔多く「葵(アオイ)」とともに詠まれた〕
IX
かも【鴨】
姓氏の一。
X
かも【鴨・鳧】
(1)カモ目カモ科のうち, ハクチョウ類・ガン類・アイサ類を除いたものの総称。 中形の水鳥。 雄は派手な色合い, 雌は地味な茶褐色のものが多い。 マガモ・コガモ・オナガガモ・ハシビロガモなど。 日本ではカルガモを除き, 多くは冬鳥。 ﹝季﹞冬。 《海くれて~のこゑほのかに白し/芭蕉》
(2)勝負事などで, くみしやすい相手。 また, だましやすい相手。

「~にする」「いい~だ」

~が葱(ネギ)をしょって来る
〔鴨鍋の材料がそろうことから〕
願ってもないこと, 大変好都合であることにいう。 鴨葱。
~の浮き寝
〔鴨が水に浮きながら寝るさまが, 不安に思われることから〕
安らかでないことのたとえ。

「沖に住む~の安けくもなき/万葉2806」

~の脛(ハギ)
鴨の脚。 短いもののたとえとする。
~の水掻(カ)き
鴨は気楽そうに水に浮かんでいるが, その水掻きは水中で絶えず動いているという意。 人知れぬ苦労の絶えないことのたとえ。

Japanese explanatory dictionaries. 2013.

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